20. 手を伸ばせば、届く距離

20. 手を伸ばせば、届く距離　　愛さま　【あいあいのらくがき】

緋色の欠片　卓×珠紀

たとえば、性別たとえば、性別
たとえば、身長
たとえば、年齢

私と彼の違いをあげればキリがない
はぁ～…と静かに溜息をはきつつ、上を見る
色とりどりの葉が風にゆれてどこまでも続いている
私は今、紅葉が見ごろということで、卓さんにおススメの場所があると聞き、こうして彼の後ろについて歩いているのだけれど……

じっと背中を見つめる
私と卓さんとの距離はいったいどのくらいあるのだろう

遠そうだな……

でも、目の前には卓さんが見える
手を伸ばせば届く距離
彼の左手をじっと見る。そっと手を伸ばし……

あと10ｃｍ

あと5ｃｍ

あと・・・

もぅ少しというところで手を止めた
私の勇気はどうやらここまで
ここから先に進むことが出来ず、引っ込めることも出来ず
これからどうしたらいいのかも思い当たらず

迷子になる

綺麗な髪……私の髪とは大違い
自分の髪をひと房にぎり俯くと上から声がおりてきた

「どうしたのですか？」

前を見たまま話しかける卓さんに、体がビクッとなる
慌てて手を引っ込めようとした私の手を彼がとった
そっと上を見ると優しい笑みをこちらに向けている

「……なんでもありません」
「おや？何でもないのにじっと私をみていたのですか？」
「え？」
「視線をずっと感じていました」

き、気付かれてた…………恥ずかしい

「何を考えていたのですか？」
「…………いえ、何も」
「答えられない？では、当てましょうか」

ドキっとして思わず立ち止まってしまった

「え？あの…」
「…………。」

じっと、私の全てをみるかのように見つめられ、冷汗がでる
凄く恥ずかしくて、ドキドキして目が離せない…………ちがう、離すことを許されない

「す…卓さ……」
「ぷっ…」
「・・・ぷ？」
「す、すみません。あなたがあまりにも可愛らしいので、つい」

盛大に笑っている彼をみて、思わずぽかんとする
か、からかわれた・・・

「卓さん！！」
「あぁ、そんなに怒らないでください。冗談ですよ。」

もぅ！っと頬を膨らます私の手を、卓さんはもぅ一度握り直し「さ、もぅすぐ着きます。いきましょうか？」とサラッと手をひいた
今の私たちに距離は無いように感じて、幸せを感じる

“好きですよ、卓さん”

このまま、ずっと一緒にいたい